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思考

「好意……不思議な言葉だ」

 彼が物心ついた頃には、既に両親の存在は無かった。
 そんな彼は「親」というものは知らないし、本来であれば親から受けるのであろう愛情も知らない。周りにあったものは欺瞞、不信、妬み……そう言った負の感情ばかりだ。
 だからだろうか。彼は好意というものが良く分からない。
 それは彼が恩師と呼ぶ人物に会っても変わらなかった。因みに彼が師と仰ぐ人物は今時珍しい人格者で、彼の歪んでいた性格は師と過ごすうちに矯正されていく事になる。しかしそれでも好意というものだけは良く分からなかった。
 「好き」とはどういう気持ちなのか?
 人は人を愛すと言うが、果たしてそんな事があるのだろうか。単に性的欲求を満たす為だけに人は人を愛する。それが産まれ落ちた治安の悪い下層で彼が学んだ「愛」だ。
「好きと愛は違う」
「何がどう違うのですか? 本では男女が性的欲求を満たしつつ『好き』『愛している』の言葉を繰り返していますが」
「……お前は何の本を読んでいるのだね」
「知らない男から、飽きたからと貰いました」
「お前にはまだ早い」
「子供扱いしないでください。生きる為に色々やってきました。私は人の負の部分を知っている。……だから私は子供ではありません。子供でいる事は、私にとって死を意味します」
「………。……お前は……」
 そう言って師は大きな溜息を吐いていたのを、彼は良く覚えている。今でも何故溜息を吐かれたのかは分からない。
 思えば、彼はその歳に相応しくない、あまり可愛くない子供だった。
 おおよそ子供らしさとはかけ離れた彼は、人はおろか、物や事象、概念を好きだと思った事は無い。いや、思ってはいるのかもしれない。唯「好き」だと認識出来ないだけなのだろう。
 現に、自分以外の者が「これが好き」と言えば、彼は納得する。深層では理解している為に他ならない。唯自分自身の事となると脳や心が理解する事を拒絶してしまう。
 彼は怖がっている。その感情を理解する事を。
 しかし彼自身は怖がっている事自体も分からない。
 故に、直接聞かれると曖昧に返してしまう。今までにその返答を不思議がる者はいた。しかし相手が不思議がろうとも、彼自身でも不思議なのだからどうしようもない。
 彼が唯一認識している好意――それは彼が初めて心から美しいと思った、かの日の朝焼け空に対するもの。
 それ以外には、例え好意を感じていても彼自身は認識していない。
「……寂しい事だな」
 それを聞いて悲しそうに呟いた恩師も、今はいない。






※何かこう書くと誤解されそうですが、アルスは色々なものや人に好意を抱いてます。ただ「好き?」と聞かれると「好きって何?」という感じになってしまうだけです。

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